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第868話
斗真に『無理をしない、我慢しない』と約束をさせてから一カ月とちょっと、とうとうマイク達の来日を迎えた。
俺達は早起きして部屋の準備も万端整え、いそいそと空港行きの電車に揺られていた。
「アイツら本当に長期休暇なんて取って大丈夫だったのかな。」
「日頃だろ?日頃がモノを言う。俺達だってそうじゃん!
ちょうど桜も咲き始めて良かったよな、帰る頃にはきっと満開だよ。
“ザ・ジャパン!”って感じで最高だね。
喜んでもらえるといいな。」
ありがと、と斗真の頭をくしゃくしゃと撫でてやった。
「いいか、『我慢しない』。
これはちゃんと守ってくれ。」
「分かってる。」
鬱陶しいと言わんばかりに、俺の手をやんわりと跳ね除けた。
「うわぁ…迷子になりそう…」
ついつい愚痴が出るのは仕方がない。
春休みと旅行シーズンとが重なり、荷物を持つ人達で空港内は騒然としていた。
「そろそろ着く頃だよ。」
離れないようにさり気なく斗真の手を取り、待ち合わせた四階へエスカレーターで移動する。
ここで軽く蕎麦(ケータのご所望だ)を食べてから、今日は都内観光へ繰り出すのだ。
今か今かとコインロッカーの前で待っていると
「「ノゾミー!トーマッ!」」
マイクだ!
大きなトランクを引きながら、満面の笑みを浮かべてマイクが、その後から同じように笑いながらユータが現れた。
「「マイク!ユータ!!」」
走り寄って、ハグを交わす。懐かしい顔。
「ようこそ、日本へ!長旅で疲れただろう?」
「時差ボケ対策もしっかりしてきたから大丈夫さ!な、マイク。」
「うん!俺達に付き合わせて休みを取らせて悪かったな。
でも、会えてうれしいよ!」
「心配しないで!
ちょうど桜もいい感じに咲き始めたから、楽しんでもらえると思うよ。
さ、蕎麦食べに行こう!」
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