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第870話
「「ソバマンジュウ?」」
ははっ、綺麗にハモってる。
「そう。そ・ば・ま・ん・じ・ゅ・う!
この蕎麦と同じ蕎麦粉で作った甘いお菓子だよ。美味しいから食べてごらん。」
せーの、でぱくり。
咀嚼する二人の顔が綻んできた。
「ノゾミ、トーマ、早く食べて!美味しい!」
「美味い!甘くて美味しい!」
俺達も、ぱくり。うん、やっぱり美味い。
斗真、頬が緩んでる。
ちろん、と俺を見るのは、残りの半分欲しいのか?
「斗真、齧り掛けでごめん、これやるよ。」
「えっ、いいの?ホント?へへっ、ありがと。」
俺の歯型が付いたのも構わず、口に放り込んだ。
ほんっとに甘い物には目がないんだから。
ほら、見ろ。二人ともにやにや笑ってるじゃん。
でも斗真、かわいいぞ。
人目がなかったら抱き付いてるよ、俺。
「へへっ、希、ありがと。…ん?みんなどうしたの?俺何かした?」
「斗真がかわいいことするからさ。
さ、お茶飲んだら出掛けようか。バスの時間も迫ってるから。」
「ご馳走様!ソバもソバマンジュウも美味しかったよ。な、マイク。」
「うん、ご馳走様。日本は食べ物が美味いなぁ。
今からも楽しみだよ。」
「…希の饅頭食べたのマズかった?」
俺は斗真の頭をくしゃりと撫でて“行くぞ”と促し、まだしっくりこない顔の斗真の肩をユータが軽く叩き席を立った。
サービスしてくれた店員さんに、二人がカタコトの日本語で『アリガトウ』と言うと流暢な英語で返されて驚いた。
「You’re welcome.」
やるな、流石空港勤務。
小腹を満たした俺達は、スーツケースを引く二人を従えて、バス乗り場に向かった。
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