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第873話
ガイドさんの説明を受けながら、車内から見て通り過ぎる国会議事堂や皇居。
下車せずに素通り…これで『観光』の一部なのか…
流暢な英語や韓国語が車内を巡っている。
皇居前は相変わらず、カラフルなスポーツウェアに身を包んだ市民ランナーが大勢走っていた。
すかさずマイクがガイドさんに突っ込んでいた。
端々に聞こえる言葉尻から…そうか、警備体制は大丈夫なのかと不思議に思うのか。
アメリカ的に言うと、ホワイトハウスの周りをひっきりなしに不特定多数の人間がランニングしてるようなもんだからな。
日本は平和だ。世界一安全な都市、TOKYO。
「希…そう言えば、最近ジムに行けてない…」
「ホントだ。忙しくって、そんな余裕がなかったから…来週には落ち着くだろうから、またぼちぼちと行こうか。」
「そうだな。身体が鈍って、何だか筋肉まで落ちてきた感じが…というか、筋肉も体力も落ちちゃってるから…」
斗真が語尾を切った。
食欲がなくて食べることもできず、衰えていく筋肉や体重の自覚はあったのか。
ごめんな、斗真。気付いてやらなくて。
胸がズキッと痛んだ。
「希、どうした?気分でも悪いのか?」
斗真が俺の顔を覗き込んできた。
あっ、いけない。顔に出てたのか。
「ううん、何でもないよ。さっきの天ぷらが腹にもたれてるみたいだ。」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。しばらくしたら落ち着くよ。
調子に乗ってがっついて食べたからさ、胃が吃驚したんだよ。
あ、ほら!もうすぐ雷門が見えてくるぞ!」
タイミング良く、ガイドさんの説明が始まった。
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