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第875話

ユータが満面の笑顔で 「面白かったー!サトコサン、サイコーっ!」 どうやら、ガイドさんの下の名前は『サトコさん』と言うらしい。 いつの間に名前を聞いたんだろう。 「うん!トークも上手いし気配りも凄い! 俺達、サトコサンの大ファンになったよ。 まさに“オ・モ・テ・ナ・シ”だね! 彫物(ほりもの)の技術も凄いよな。本物を今から見れるんだね!」 「俺達も詳しくは知らなかったんだよ。 さ、信号が変わる。行こうぜ。」 斗真にアイコンタクトで『やったな!』と伝えると、満足気に頷いて先導して歩き始めた。 「あーっ、カミナリモン!フージン、ライジーン!」 偶々通り掛かった人の良さそうな男性をロックオンして、写メを撮ってもらうことにした。 興奮気味のマイクを制して、まず四人で一枚。 風神雷神と同じポーズを取って二、三枚。 お礼を言い受け取ると、二人で、と一人ずつのを撮ってやって、俺達も撮ってもらって、提灯の下を覗き込んだ。 「あーっ、これだぁーっ!マイク、見てっ!」 「うおっ、すごっ!」 「写真とおんなじー!」 俺達と同じように下を覗き込む人で順番待ちになっていた。 下部にちゃんと社名と寄贈者の名前があった。 何枚か写メって満足したのか、ユータがそこから離れて振り向くと 「うわっ、リュージンサーン!」 バスの中で見た天龍と金龍がこちらを見ていた。 龍神を擬人化したというその姿は麗しく逞しくもあった。 「あっ、尻尾があるっ!」 斗真の声にマジマジ見てしまった。 バチ、当たらないだろうな…合掌… ここでも気の済むまで撮影する二人を時間を気にしながらも眺めていた。 バスで同乗していた人達はさっさと移動を始め、小さくなる背中は人混みに紛れていた。

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