876 / 1000
第876話
ここから本堂までかなりの距離があるし、何よりも誘惑感満載の土産物屋がずらりと並んでいる。
マイク達の好奇心を満足させ、お参りを済ませて、集合時間までに遅刻しないように辿り着かねばならない。
ツアーは時間厳守。
この後の遊覧船の時間に遅れでもしたら大変だ!
万が一遅れるとその後の皆の痛い視線に耐えねばならない。それに遅れたことに対する補償も発生するかもしれない。
その場を離れ難いような二人をやんわりと誘導し、顔では笑い、焦りながら歩き出した。
「あっ、希ーっ、これ食べたいっ!」
斗真の声に振り向くと、『芋ようかん』と書かれた貼り紙が…斗真は嬉々とした顔を浮かべてその場所から動かない。
斗真、お前もか…
「ユータ、これ買おうぜ!」
少し離れた店からは、マイクの声が。
何やらTシャツを持って、二人でイチャついている。
俺は斗真の側に駆け寄りケースを一瞥すると、店のオバちゃんに引きつりながらも満面の営業スマイルで、斗真の意見も聞かずに注文した。
「これとこれ、一箱ずつ。
このバラ売りを二十四個、一種類ずつ六個ずつに分けて袋に入れて。」
「…希…」
「ごめん、斗真。思ってるより時間がないんだよ。集合時間に遅れたら後々大変なんだ。
この店で他に何か欲しい物ないのか?」
「…ううん、それでいい。ごめん。でも、ありがと。」
俺のイラつきが伝わったのか、斗真はそれ以上何も言わなかった。
代金を支払い商品を受け取ると、バラで包んでもらったあんこ玉を一つ、斗真の口に放り込んでやった。
「とーま、ほら、あーん。」
目をパチパチさせながら、むぐむぐと咀嚼する斗真の顔が綻んできた。
「んふっ、美味しい!」
さぁ、次はマイク達だ!
ともだちにシェアしよう!