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第877話
人前だろうが何だろうがもうどうでも良くなっていた。
斗真の口に入れる前に、素早くあんこ玉にキスをして、餌付けのように続けてもう一つ斗真の口に入れてから、マイクの元に向かう。
斗真は目を白黒させながら何か言いたそうだったが、大人しく俺のなすがままになっていた。その耳が瞬時に真っ赤になったのが目の端に見えた。
俺達が店先に着く頃には、彼らはもう買い物を終えていた。
「何買ったんだ?」
「へへっ、あのさ、風神雷神が背中に描いてあるTシャツ!イケてるだろ?皆んなに配るんだ!」
なるほど、軒下に吊ってあるこれか。
余程気に入ったんだな。
「OK、さぁ、行くよ。」
その後も大変だった。
微かに生まれた愚痴や不平不満を吹き払ってもらおうと風神様にお願いをしながら前へ進む。
スカイツリーが見える細い路地まで戻り、また人の良さそうな男性を捕まえて写メってもらった。
甘いものに目のない斗真にはパラダイスな店が並び、その都度斗真が何も言わなくても手土産用の箱と食べ歩き用を買ってやる。
時折俺の機嫌を伺うようにチラチラと見ているが、俺からは何も言わない。
斗真は今、人形焼をちびちびと口に運んでいる。
「斗真、美味いか?」
うんうんと頷く様子に絆されて、あられも買ってやった。
両手に食べ物ばかりをぶら下げた斗真を引き連れて、頭の中では時間配分を計算しながら、いいペースで進んで行く。
マイクとユータは、“日本的”な土産をゲットするためにあちらの店こちらの店と行ったり来たりを繰り返しはしゃいでおり、そんな彼らをなだめすかして本堂に辿り着く頃には、正直俺は疲れ果てていた。
添乗員ってすっげぇハードな仕事なんだな…俺には無理だ…
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