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第878話
やっと本殿に辿り着き、参拝の仕方を教えて観音様にお祈りする。
決して信心深い訳ではないが、多くの参拝客でごった返す中、俺は一生斗真と仲良く添い遂げられるように、そして来世でも来々世でも必ず結ばれるように、とひたすらに祈った。
祈り終わってふっと横を見ると、斗真がまだ手を合わせていた。
その隣のマイクとユータも神妙な顔で手を合わせている。
邪魔をしないように身体を移動させると、それに気付いた斗真がふっと顔を上げた。
絡む視線。潤んだ瞳。
一瞬泣き笑いの表情を浮かべた斗真。
お前は何を祈ったんだ?
声を掛けようとしたその時、ユータが
「なぁ、ノゾミは何を祈ったんだ?トーマは?
マイクは?」
「そう言うお前は?」
マイクに突っ込まれたユータは、はにかみながら
「それは、その…ずっとマイクと仲良く元気で過ごせますように、って…」
「ユータ…俺も、俺も一緒だよっ!」
「マイク…」
「あーっ、はいはい、ストップ!
取り敢えず、他の人の邪魔になるから移動しよっか。
イチャイチャは二人っきりの時にしてくれよな!
ほら、行くぞ!」
そのまま放置すれば、熱烈なる抱擁が始まりそうな二人を急かしてその場から離れた。
「…希…」
「ん、どうした?」
「希は…希は何を願ったんだ?」
「そう言う斗真こそ。」
「俺?俺は」
言い掛けた斗真の言葉の上から被さるように、マイクが割り込んできた。
「トーマ、何沢山持ってるの?お土産?何買ったの?」
「全部食べ物だよ!俺、甘い物大好きだから、希が買ってくれたんだ。
あ、これはマイクとユータの分だよ。食べてみて!」
「何だ?あっ、綺麗。これ何?」
「“あんこ”知ってる?小豆っていう豆を砂糖で煮た甘いやつ。その上から“寒天”…これは海藻から作ってるんだけど…で包んでるんだ。
まぁ、食べてみてよ。」
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