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第879話

恐る恐る口の中に入れたマイクが 「甘いっ!美味っ!何これ!?」 ユータも同じリアクションをしている。 二つ、三つと立て続けに口に放り込み、斗真と甘い物談議を繰り広げる三人を引き連れ、何とか時間ギリギリに集合場所に辿り着いた。 セーフ! バスに乗り込むと、案の定俺達が一番最後だった。 遅くなってすみません、と言いながら席に着いたが、“サトコさん”は親指を立て、にこやかに微笑みながら言った。 「大丈夫!三分前!セーフですよ!よく頑張りましたね! あなたが望むなら、添乗員に推薦しますよ! いえ、ぜひスカウトしたいわ!」 きっとアタフタする俺のこと、見てたんだろうな… 大きなため息をつく俺に、斗真が小声でささやいた。 「希、気を揉ませてごめんな。 俺、夢中になっちゃって、時間の心配にまで気が回らなかった。」 俺は首を振り 「すぐに気付いたんだろ?分かってくれてありがとう。 …俺もイラついててごめん。」 「希が時間配分して先導くれてなかったら、俺達遅刻して皆んなに迷惑かけてたところだったよ。 ごめん、ありがとう。」 「せっかくの観光に嫌な思いさせてごめん。 顔に出てただろ、俺?」 「ううん、それは流石に。 そこら辺は上手く流してたな。」 「そうか…それならいいんだけど。」 チラリとマイク達の方を見ると、全く気にしてない様子で、サトコさんと何やら盛り上がっていた。 右手に温もりを感じ手元を見ると、斗真が俺の手をそっと握っていた。 途端に焦りや怒りのマイナスの感情が消えていくのを感じて、指を絡ませ頷いた。 ふにゃりと微笑んだ斗真に口パクで『ありがとう』と伝えると、ふふっ、とうれしそうに笑った。 やっぱり俺の斗真はサイコーだ!

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