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第880話
斗真に癒されているうちに、船着場に着いた。
順次バスを降りて、旗を振るサトコさんの先導の元、纏まって船を待っていた。
マイク達は、仲良くなった他の観光客と話が弾んでいるようだった。
多分…彼らも“俺達と同類”だと思う。何となく…だけど。
背の高いグレーの髪色のイケメン男性に、彼より少し背の低い黒髪の…アジア系か?サングラスをかけた男性が甘えるように寄り掛かっている。
その二人と談笑しているマイク達も、いい雰囲気を醸し出していた。俺達に手を振り四人でこちらを見ているから、話題に上っているのかも。
桜が咲く春とはいえ夕方の海風は思ったより肌寒く、薄着を選んだことを今更ながら後悔しながら目を瞑り、ふるりと身震いした。
横からふわりと暖かな物に包まれ、驚いて視線をやると、斗真が笑っていた。
俺の首には、斗真が巻いていた薄手のコットンのストールが掛けられていた。
「首元があったかいだけでも違うから。」
「でも、お前が」
「俺は大丈夫。下にヒートテック着てるから。」
「でも」
「メインホストのお前の具合が悪くなりでもしたら、ゲストが気にするだろ?いいから。」
「…ありがとう。」
斗真は本当に俺のことをよく見てる。
そして気遣ってくれる。
さっき、少し嫌な態度を取っていたことを心から反省した。
「…斗真、さっきごめん。」
「何が?」
「せっかく楽しんでいるのに、嫌な気分にさせた。」
「全然気にならない。
そのお陰で時間までに帰ってこれたじゃないか。
おまけにサトコさんにヘッドハンティングまでされてさ!
もう、その話はお終い。
それより、ほら、マイク達楽しそうだぜ。」
彼らの周りには、さっきより人が寄って賑やかになっていた。
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