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第881話

船が接岸して、二列ずつに並び行儀良く順番に譲り合いながら乗船していく。 「どうする?外は風が冷たいから、中に入ろうか。」 「じゃあ、あそこにしようぜ!」 真ん中くらいのテーブルを陣取り四人で座り、先程配布された地図を見ながら話していると、船は間も無く動き出した。 外に出ていた人達も、冷えた海風に耐えかねたのか中に入ってきていた。 アナウンスが流れ、俺と斗真とで通訳しながら外の景色を眺めていた。 「こうやって水上から見上げるのって初めてなんだよね。」 「そうなんだ!ねぇ、あの金色のオブジェは何?すっげぇ目立つんだけど。」 「あぁ、あれ? あれはね『聖火台の炎』。ビール会社の社員の燃える心を表してるんだってさ。 その左のビルはね、ジョッキ!」 「あー、なるほど!面白いねぇ。 あっ、スカイツリーも見えるよー! あー、桜!綺麗だなぁ…あれ、オハナミ?」 「そうそう、お花見。今から宴会だな、きっと。」 「どこもかもピンクだね。 あそこは自由に歩けるの?」 「うん。京都に行けば、好きなだけ歩けるからここでは見るだけにしような。」 「OK!それにしてもNYに負けず劣らずのビルが並んでる。 あ、誰か手を振ってるよ!俺達のこと見えるのかな。」 ユータが手を振り返すのを見て、俺達も手を振った。 斗真がコーヒーを買ってきてくれた。冷えた身体にはありがたかった。 マイクもユータも人心地ついたようだった。 「夜はさ、俺達の馴染みの店に行こうと思ってるんだ。好き嫌いなかったよな?」 「ノゾミのお陰で日本食は何でも食べれるよ! サシミもナットーも!」 「希…どんな鍛え方したんだ?」 「スパルタにした記憶はないよ。な、マイク、ユータ?」 「それはどうだか。」

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