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第882話
笑い合って昔話をしているうちに、船はどんどん下流へと進んでいた。
「うわぁ…こんな屋根スレスレの橋の下を通るの?大丈夫?」
いくつもの橋を潜り、その度に大騒ぎをするユータを揶揄いながら、次第に夕暮れ色に染まる景色を楽しんでいた。
マイクがユータの手をそっと握りながら言った。
「綺麗だね…こんなにのんびりできるのも二人のお陰だよ。
連続した休みが揃うことって中々なくってさ。
今回思い切って申請して良かったよ。
『新婚旅行もまだだ!』って訴えたら、意外とすんなり許可してもらえた。」
「そうそう。いつも飛び飛びだったり、夜勤明けと日勤ですれ違ったり。
俺達にとったら、今回は本格的な新婚旅行みたいなもんなんだ。」
「そんなラブラブな旅行に俺と斗真とコブ二つ付いて悪かったな。」
あははっ
「こんなコブなら大歓迎さ!」
「あ…そろそろ到着みたいだぞ。」
「楽しかったー!もう終わっちゃうのか…残念。
あれ…さっきのカップル…」
マイク達と仲良くなった二人が近付いてきた。
「君達と会えて楽しかったよ。また何処かで会えるといいね。」
「あぁ。また何処かで。」
小柄な男性(パッと見、女性に見える)がサングラスを外して、斗真に声を掛けた。
「お久し振りです、影山先輩。」
突然名前を呼ばれた斗真は、ぎょっとして彼を見つめていたが
「ひょっとして…浜田?うわぁ…何年振りだ?
何でここに?」
ふふっ、と恥ずかしそうに笑うと、隣の彼の腕に身体を絡ませた。
「ダンナの仕事の関係で帰国中なんです。
まぁ、勘当されたんで実家も親戚もないんですけど。」
そして、ダンナさんにひと言ふた言何か早口で告げた。
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