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第886話
テーブルには、小さなグラスに梅が沈んでいる…梅酒だな。
そして白い長皿。その上にはホタルイカと菜の花の味噌和え、焼いたホタテの下に白いソース、そして紫色と緑が鮮やかな葉物を生ハムで巻いた物…が並んでいた。
「これがお品書き…えーっと…白いソースはホワイトアスパラだって!この葉っぱは水菜とトレビス!?サラダによく入ってるやつだよ。
ホタルイカは光るんだよ。海の宝石って言われるんだ。
“春”って感じだね。和食は目で季節も味わうんだよ。」
斗真が携帯を見せながら、二人に説明している。
「失礼致します。」
再び女将が入ってきた。
マイクとユータに熱燗、俺達には生ビールを配り終えると
「次々お運びしますからね。ごゆっくり。」
と言いながらお碗を置いていく。
「じゃあ取り敢えず乾杯しようか…
マイク、ユータ、ようこそ日本へ!
目一杯楽しんで!かんぱーい!!」
「「「かんぱーーいっ!!!」」」
食前酒の梅酒はまろやかで、とろりと喉元を通り過ぎた。
そして改めて注文した飲み物で乾杯した。
「……くうっ…胃に入っていく…スッキリしたオサケ、美味しーい!」
「ニホンシュ、最高!」
前菜と、お碗に盛られた春の炊き合わせを楽しみながら、お互いの近況を伝え合った。
バスの中では観光に夢中でそれどころではなくて、やっと話が出来る、という時間が持てた。
さり気なく女将が刺身の盛り合わせや肉料理を運んでくれる。
「相変わらずバーベキューやってるの?」
「そうだよ!あ、簡単なバナナケーキの作り方を教えてもらったから、トーマに伝授するよ。」
「やった!前に教えてもらったチョコガナッシュ、何度か作ってみたんだ。」
「どうだった?ちゃんとできた?」
「うん!美味しかったよ。」
「ほとんど斗真に食べられたよ。俺はひと口だけ。」
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