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第887話
大爆笑していると、突然斗真が話を切り出した。
「…ねぇ、マイク、ユータ…あれから、どうなったの?」
「え?」「何?」
「あの事件の…捕まった奴ら。
アイツら、どうなったの?」
マイクとユータは顔を見合わせ『伝えてもいいのか?』と、俺の顔色を伺っている。
俺も突然のことでどうしていいか分からず、斗真の真意を図りかねていた。
斗真は畳み掛けるように、また彼らに言った。
「俺は大丈夫だから。お願い、教えて。」
マイクとユータはもう一度顔を見合わせると、斗真の顔をしっかりと見つめた。
「…今、話さなきゃいけない?」
斗真は無言で頷いた。
「俺もあの事件とちゃんと向き合って、希と前へ進みたい。
だから、お願い。」
マイクとユータが俺の顔色を伺っている。
「トーマ…」
「失礼致します。」
タイミング良く、女将がメインの料理を運んできた。斗真がすかさず声を掛ける。
「女将さん、悪いけど残りの料理も全部運んできて!」
「え?よろしいんですか?」
「うん。ご飯もお櫃 に入れて持ってきてよ。
後は勝手にやるから。何か注文があれば声を掛けるし、お願い。」
あざとい営業スマイルを振り撒く斗真に
「まぁ、それでよろしいのなら…皆さんもお運びしてよろしいですか?」
この知能犯め。勝手なことしやがって。
ムカムカと苛立ちが沸き起こっていたが、膝に置いた斗真の手が震えているのに気が付いた。
「ええ。お願いします。」
「ノゾミ!?」
驚くマイクとユータを制して、俺も頼んだ。
承知しました、と急いで出て行く女将の後ろ姿に、心の中で『ごめんね』と呟き斗真を見ると、しゃんと前を向いて胸を張っていた。
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