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第889話

ユータが言葉を紡ぐ。 「確かに、そうだ。心の傷は消えやしない。時が経っても、小さな古傷として残るだろう。 トーマ、それでも君の側には常にノゾミがいる。 微力ながら俺達も。 君を愛し、慈しむ家族や友人達も。 だから、忘れろとは言わない。 ノゾミと一緒に一歩ずつ進んで行ってほしい。 みんなの愛を受け取って幸せになってほしい。」 俺の脳裏には、ジェシカや兄貴達、斗真の家族、それにミシェルやダニエル、日向に瑞季達の顔が浮かんできた。 きっと斗真も同じことを考えているんだろう。 うんうんと頷いて目元に滲んだ涙を拭っていた。 やはりあの時の恐怖は斗真をまだ苦しめているんだ…斗真、辛い目に遭わせてごめんな。 暫くして斗真は、マイクとユータに笑顔を見せ、俺に甘えるように言った。 「二人ともありがとう。 言いにくいこと言わせてごめん。 俺、希に思いっきり頼って甘えて愛してもらうよ!な、希!?」 「今だって存分に甘やかしてやってるだろ? まぁ、俺はスパダリだから、斗真の望みは何でも叶えてやるけどな。」 「ヒュウッ!妬けるなぁ。 なぁ、マイク、俺も甘えていい?」 「何だよー。今だって甘えてるじゃないかっ! これ以上甘やかしたら溶けてなくなっちまうよー!」 あははっ やっと元通りの和やかさが戻った。 少し氷が溶けた、それでも器は十分に冷えたプリンを口にする。 自分の分を平らげてもまだ物足りなさそうな斗真に、俺の分を分けてやった。 「トーマ、甘い物ばかり食べてると太るよー。」 なんてユータに揶揄われながらも完食した。

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