889 / 1000
第889話
ユータが言葉を紡ぐ。
「確かに、そうだ。心の傷は消えやしない。時が経っても、小さな古傷として残るだろう。
トーマ、それでも君の側には常にノゾミがいる。
微力ながら俺達も。
君を愛し、慈しむ家族や友人達も。
だから、忘れろとは言わない。
ノゾミと一緒に一歩ずつ進んで行ってほしい。
みんなの愛を受け取って幸せになってほしい。」
俺の脳裏には、ジェシカや兄貴達、斗真の家族、それにミシェルやダニエル、日向に瑞季達の顔が浮かんできた。
きっと斗真も同じことを考えているんだろう。
うんうんと頷いて目元に滲んだ涙を拭っていた。
やはりあの時の恐怖は斗真をまだ苦しめているんだ…斗真、辛い目に遭わせてごめんな。
暫くして斗真は、マイクとユータに笑顔を見せ、俺に甘えるように言った。
「二人ともありがとう。
言いにくいこと言わせてごめん。
俺、希に思いっきり頼って甘えて愛してもらうよ!な、希!?」
「今だって存分に甘やかしてやってるだろ?
まぁ、俺はスパダリだから、斗真の望みは何でも叶えてやるけどな。」
「ヒュウッ!妬けるなぁ。
なぁ、マイク、俺も甘えていい?」
「何だよー。今だって甘えてるじゃないかっ!
これ以上甘やかしたら溶けてなくなっちまうよー!」
あははっ
やっと元通りの和やかさが戻った。
少し氷が溶けた、それでも器は十分に冷えたプリンを口にする。
自分の分を平らげてもまだ物足りなさそうな斗真に、俺の分を分けてやった。
「トーマ、甘い物ばかり食べてると太るよー。」
なんてユータに揶揄われながらも完食した。
ともだちにシェアしよう!