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第890話

女将やスタッフにお礼を言い、俺達のマンションへ向かう。 何となく斗真が纏っていた鎧のようなものが、外れたような気がしていた。 俺はマイクと。斗真はユータと並んで、取り留めのない会話を交わしながら、移動する。 「ニホンの地下鉄は美しいよ!落書きなんて見当たらない。ゴミも落ちてない!」 マイクがひどく感心しながら目を見開いている。 「うん、そうだね。 誰かが捨てると、ゴミがゴミを呼んで瞬く間に汚くなるからな。 そうならないように掃除してくれる人がいるから。」 「汚い物には汚い物が寄る、っていうことか… 人間関係みたいだな。」 あの事件のことか…うんうんと頷くと、マイクはそっと俺だけに聞こえるように言った。 「トーマは落ち着いた風だが…あれで良かったのか?」 「はっきり伝えてくれてありがとう。 斗真は正義感が強いから、納得したと思う。 アイツが本当の意味で立ち直れるように、俺が支えていくから大丈夫だ。 何かあったらお前達を頼るから、その時は頼む。」 拳と拳を突き合わせた。 「それにしても、相変わらずユータはお前にぞっこんなんだな。」 「いや、その逆。俺がユータから離れられない。 勤務が昼夜逆転してすれ違った日には、精神的におかしくなりそうだから。」 「うわぁ…ヤバい。俺よりヒドイ。 粘着質な愛情…こりゃ、ユータも大変だな…同情するよ。」 「ノゾミに言われたくないなぁ。 まぁ、俺達は心底惚れた伴侶を愛し続けてる、ってことだな、時々疎まれながらも。」 「ホント、そうだなぁ…俺はもう斗真なしでは生きていけないもん。」 「うへぇ、惚気やがって…ご馳走様!」 あははっ

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