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第892話

「おーい!ありがとう!ニホンのフロはいいなぁ。」 「お先にありがとう、トーマ。これもありがとう。」 湯気でほこほこの二人がやってきた。 「パジャマも丁度良かったみたいだね。 それ、良ければ持って帰って使ってよ。」 「ホント!?いいの?ありがとう! 凄く肌触りがいいから、何処のメーカーか教えてもらって買って帰ろうか、ってマイクと話してたんだ。」 「それは良かった。俺も入ってくるから、炬燵でゆっくりしてて。 あ、飲み物は冷蔵庫にあるから、勝手に好きなの飲んでてよ。」 「コタツ!おーい、マイク!こっちにおいでよ! コタツだよー!」 え?今『俺』って言った? 聞き間違いじゃないよな? 「斗真…」 「希、早く入るよ。」 俺の方を見ることもなく、斗真はバスルームへ走って行った。 え?いいのか?ホントに?マジで? 斗真の気が変わらぬうちにと、俺も後を追いかけた。 上半身が露わになった斗真は、俺をチラリと見て 「手ぇ出すなよ。」 と凄むけれど、今の俺にしたら子猫の威嚇くらいにしか思えない。 しおらしく頷いてはみたものの、心の中はどうやって仕掛けるか、それだけで頭が一杯だった。 ばさりばさりと着ていた物を脱いで、斗真に近付いた。 心臓はばくばく跳ねるけれど、素知らぬフリをして一緒にシャワーを浴びる。 ボディソープを身体中に塗りたくって、ついでに斗真も洗ってやった。 「希っ!手ぇ出すなって言っ、んっ」 最後まで言わさないよ。濃厚なキスで口を塞ぐと、苦しくなったのか斗真は一瞬大人しくなった。 チャンス到来!と思ったのも束の間… 次の瞬間、胸や背中をボカスカ殴られ、思わず唇から離れると、低い声が落ちてきた。 「『手ぇ出すなよ』って言ったよな。」 冷えた声と冷ややかな視線。 ヤバい、怒らせた!

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