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第893話
こんな時は速攻謝るに限る!
「ごめんなさい。調子に乗りました。
もう手は出しません。許して下さい。」
斗真はチラリと俺を一瞥すると、無言で髪を洗い暫く湯船に浸かった後、俺に目もくれずに出て行ってしまった。
はあっ…マズい。本気で怒らせたかも…
他人がいる時にイチャつくのは、斗真が嫌がることのひとつだった…俺はアメリカナイズされているから人前でも全然平気なんだけど、『普通の純日本人』の斗真にとっては、それは“単なる恥ずかしい行為”にすぎない。
ましてや、風呂場で、真っ裸で…『何ヤってんの?』と勘繰られる…
あーっ、でも一応中断して謝ったからな、俺は!
わしゃわしゃと髪を洗い、一頻り反省をしてから風呂から上がった。
リビングからは、三人の笑い声が聞こえる。
機嫌直った?
いや、違う。マイク達に気付かれないように合わせているだけだ。
ヤバい。
後で真剣に謝ろう。
「おーい、ノゾミーッ!何飲む?」
俺はテーブルのグラスを見て答えた。
「俺もビール。」
少し酔って俺達を無視してイチャつく親友を横目で見ながら牽制する。
「明日は京都に移動するよ。時差ボケもあるだろうし、朝早いから今夜は程々にしよう。
明日は新幹線の中でも旅館でもゆっくりできるから、そん時にじっくり話そうぜ。」
「「はーーい!」」
それから明日明後日の日程を確認して、大喜びのマイクは早速ネットで検索している。
彼にピッタリとくっ付き、横から覗き込むユータがかわいらしくて、思わず吹き出した。
斗真を見ると『やれやれ』という感じで笑っていた。
当の本人達は何で笑われたのか分かってはいない。
幸せな奴らだ。
ユータが目を擦り始めると、マイクはあっさりと
「じゃあ、明日!絶対起こしてくれよ。
お休みー!」
と連れ立って寝室へ行ってしまった。
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