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第904話

お腹も膨れていい感じになったところで、早速1箇所目の三十三間堂に着いた。 丁度上手い具合に人波が途切れた時間帯なのか、拝観者は年配の女性が三人と俺達だけだった。 恐る恐る中を覗き込んだ二人は「WAO!」と言って動かない。 どうやら感動して動けなくなったらしい。 古い歴史を感じさせる仏像の群れは圧倒的な迫力で何かを語りかけてくる。 「俺、じっくり見るの初めて。 修学旅行の時は、人数が多いから、ザーーッと眺めて終わり、って感じだったし。それに、それ程興味もなかったから。」 「俺はここに来るために調べたネットの画像しかないな。 しかし、凄い…」 ようやく動き出したマイク達は、ひそひそと耳元で何か話しながらゆっくりと歩いて行く。 その後ろを俺達も着いて行った。 やがて、彼らはある場所から動かなくなった。 あ、ひょっとして… 視線の先にはよく見るとマイクに似ているような…観音様がいた。 俺達に振り返ったユータは満面の笑みで 「見つけた!見つけたよ!彼もマイクに似てる!」 そうか…似ているのは日本人だけじゃないのか。 救いの手は全世界に、ってことなんだろうな、きっと。 中々動こうとしないユータをマイクがそっと肩を抱いて移動を促した。 名残惜し気に何度も振り向くユータを見て、斗真が呟いた。 「ユータは本当にマイクのこと愛してるんだな。」 「羨ましいか?」 「ふふっ。俺だってユータに負けないくらいに…いや、それ以上に粘着的に愛されてるから。 俺、全然羨ましいなんて思わないよ。 さ、行こう。」 「斗真…」 真ん中の大きな坐像の観音様にお賽銭を入れ、素直に手を合わせる。 これから先もずっと斗真の側にいることができますように。 斗真が幸せでありますように。 「二人を追っ掛けるぞ!」 少し先を歩く二人の姿を微笑ましく思いながら、そっと斗真の手を繋ぎ堂々と歩き出した。

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