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第916話

内線で片付けを頼むとあっという間に撤収され、やっと斗真と二人っきりになれた。 「斗真、露天風呂行くか?」 「…何もするなよ。」 「分かってるよ。」 少し拗ねた口調で答えると、ふふん、と鼻で笑われた。 俺を残して外風呂へ向かう斗真を慌てて追い掛けると、目の前で浴衣を脱いだ斗真の裸体が露わになった。 見慣れた身体なのにドキッとする。 綺麗に配列された背筋と肩のライン。 きゅっ、と引き締まったヒップ。 俺がほぼ毎日抱いている身体。 欲しい。この男が欲しい。本能が訴えてくる。 俺も腰紐を外し浴衣を脱ぎ捨てると、先に湯船に浸かっていた斗真の背後に滑り込み、抱きしめた。 「先に掛け湯をしろよ…ったく…」 「ごめん、だって、早く斗真とくっ付きたくて。」 甘えた声を出しながら、猫のようにすりすりと擦り付く。 「…いつもの“俺様”はどうしたんだ、希ちゃん? マイク達に当てられたか?」 「んー…斗真が足りなかった…」 抱きしめる腕に、ぎゅっと力を込めた。 そんな俺の頭をポンポンと撫でた斗真は、そっと呟いた。 「…俺だって…希が足りなかったんだ…」 えっ…斗真…それって… 「斗真…本当?俺だけ欲しがってるんじゃなかったのか?」 「…分かれよ、ばーか。 目の前であれだけ当てられて煽られて。 あんな風に堂々と素直に甘えて甘えられて。 …二人を見ながら、自然体でいいなぁ…って、ずっと思ってた。 俺は…いくらそう思ってても、人前ではやっぱり無理だ。 でも、正直羨ましい。 人目を気にせずにいられるって。 俺は希のことを愛してるのに…自分が情けなくなってきた。」 「斗真…」 痛いほど伝わる斗真の思い。 大丈夫。お前の思ってる葛藤は全部俺に伝わってる。

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