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第930話

マイクを見ると、親指を立てて頷いている。 希が笑いながら尋ねた。 「そうか。良かったな、ユータ。 思い残すことはないのか?」 「うん!十分だよ。みんな、付き合ってくれて本当にありがとう。」 俺達も立ち上がり、ゆっくり“彼”に一礼をすると、順番に仏像達を見て回った。 ユータは、納得のいくまで思う存分堪能し、一番の目的を叶えて満足したせいか、大人しくマイクのペースに合わせて歩いている。 他の観光地も予定していたが、もう十分だとマイクが言うので止めた。 ここだけで時間をかなり使っておりギリギリになっていたし、マイクの申し出はありがたかった。 「お昼ご飯を食べたら丁度いい時間だね。 お土産を買う時間もいるだろう?」 ユータに尋ねると 「そうだね。 俺の我儘で振り回しちゃってごめんね。でも本当に良かった…ありがとう、トーマ。」 「いいんだよ。ユータの長年の願いが叶ったんだろう? …マイクは焼きもち焼かないの?」 「そういう点は理解があるんだよ。 これが生きてる人間なら別だけどね。」 くくっ…と、はにかんで笑うユータの頭を撫でるマイクの顔が優しくて。 あぁ、この二人は本当に信頼し合ってるんだな。 勝手な持論を振りかざして余計なことを言った自分が恥ずかしくなってきた。 自己の考えを物差しにして、自分の枠の中に当てはめようとしてしまう、それじゃあダメだ。 と、頭を小突かれた。 振り向くと、希が笑っている。 「とーま♡」 たったひと言、名前を呼ばれただけなのに、それだけで、ただそれだけで分かり合える。 「希…」 人目がなければ、迷わずその胸に飛び込むのに。 ひたすらに思いを込めて、愛しいひとの名前を呼んだ。

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