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第932話

本当はお昼にうどんの有名なお店に行くはずだったのだが、随分と時間をオーバーしたので、駅弁に変更した。 それぞれに好みの物を買って、早速車内で広げる。 人のを覗き込んでは、それ美味しそう、だとか、そっちにしても良かった、とか、俺の選んだのもいいぜ、とか、暫く駅弁話で花が咲いた。 行儀が悪いけど、つつき合って味見もした。 お腹も気持ちも満たされて振動も心地良くて、おまけに昨夜(ゆうべ)の無茶なの睡眠不足のせいで、段々と瞼が下がってくる。 寝過ごしたらマズいな。 「希…」 「うん、アラーム掛けとくから。 見ろよ、マイク達も寝ちゃってるよ。」 見ると、肩を寄せ合うようにして膝もくっ付け合って寝入っていた。 ふふっ。何かかわいいな。 「ごめん、俺も眠い…着く前に起こして…」 「分かったよ。お休み、斗真。」 言い終えるや否や、顔が近付いてきて唇が触れた。 「のっ、希っ!ばっ、何やってんの!? 誰かに見られたら」 「誰も見てないよ。お休み、斗真。」 笑いを噛み殺しながら目を瞑ってしまった希に、ぶつぶつ悪態をつきながら、俺もいつしか眠りの淵に引き摺られて行った。 「…ま、斗真、ほら起きて。もうすぐ着くよ。」 「ん…希ぃ?ん…」 「ほらぁ、そんなかわいい声出さないで。 斗真、起きて。」 はっと気付くと、目の前のマイクとユータがにやにや笑っていた。 口元を拭って涎が出てないことに安堵しながら 「ごめん、爆睡してた。」 と言うと、 「あははっ、俺達も今ノゾミに起こされたとこだよ。 富士山も見逃しちゃったけど、すっかり元気になったから。お腹も空いたし。」 マイクはそう言って笑っていた。

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