935 / 1000
第935話
「じゃあ、そっちの段取りは頼むよ。」
「任せとけ、ダーリン♡」
ちゅ、と唇を奪われた。
コイツ…アメリカナイズに戻ってきてる…
人前でベタベタするのも、キス…するのも、お構いなしのなし崩しになってる…ここでちょっと釘刺しとかないとな。
「希。」
「何だ?」
「人がいるのにベタベタするの止めろ。」
「…斗真、ひょっとして怒ってる?」
「うん。」
「…ベタベタするから?」
「うん。前の希に戻ってる。恥ずかしいから止めろ。」
「…善処する…」
思う節があったのか、途端に項垂れた大型犬を見て、これくらいにしておくか、とこれ以上追い詰めるのは止めておく。
「…その代わり…二人っきりの時は、いつもみたいに…」
「とーまぁ!」
ハグされて顔中にキスされる。
だから言ってるじゃん!ここは日本だ!
慎ましやかな奥深い行為を良しとする国だ!
そんな心の声を無視してキスしまくる希に呆れながら、それを嫌だとは思わない自分にも呆れる。
どんだけ希のことが好きなんだよ。
マイクとユータが何か話している声が聞こえてきた。
「希、人前は だ・め・だ!」
もう一度念押しし、腕をぐいと押して離れた。
バタン
「お風呂ありがとう!やっぱり日本はいいねぇ!」
間一髪、セーフ…
感嘆するマイクをニコニコと見守るユータ。
どう見たってユータは君にベタ惚れだよ。
さて…マイクだけが感じるユータの微妙なズレって何なんだろう。
上手く聞き出すことができるだろうか。
「斗真、俺達も入るぞ!」
“俺達?“達”って言った?
?マークが頭に飛び交う俺の手を取り、希に連れて行かれた。
「ちょっ、希!“達”って何だよ!?
入るなら先に」
「マイク達待ってるんだから早くしないと!
一緒に入った方が早いだろ?
…手ぇ出さないから、そんな警戒すんなよ。」
ともだちにシェアしよう!