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第937話

リビングで寛いでいたマイク達は、俺を見ると 「トーマ、早く食べようぜ!」 と待ち切れない様子で立ち上がった。 鍋はすでにキッチンテーブルのカセットコンロの上でスタンバイ済みだ。 二人が大好きな海鮮の具材が出汁と合わさって、何とも食欲をそそる匂いだ。 あとはすぐに煮える野菜類や豆腐なんかを入れるだけになっていた。 「お待たせ!もうすぐだから!」 マイク達を座らせ、希に全部丸投げしたから俺は食べることに専念しよう。 鍋奉行の言うことは聞かねば。 俺はご飯をよそい手渡すと、キンキンに冷えたビールをそれぞれのグラスに注ぎ取り敢えず乾杯してから、希のゴーサインを待っていた。 「ねぇ、ノゾミ、まだなのか?」 「もういいだろ?」 急かす二人を無視して希が湯気を見ている。 「………………よしっ!」 やったぁー! いっただきまーす! 俺、カニっ!! 俺、このでっかい貝! 「ストーーップ!!!」 希の大声に、箸を宙に浮かせたまま俺達三人はフリーズした。 「何だよ、希。食べていいんだろ?」 マイクが不満そうに告げた。 「はいはい、ストップ。 マイク、お碗出して。」 差し出されたお椀に手際良く具材がおさまっていく。 「次はユータ。」 言われた通りにユータが。 そして、俺。 「…希は鍋奉行なんだ…」 「「ナベブギョウ!?」」 「何それ?」 俺のレクチャーで『鍋奉行』が何たるかを知った彼らは、ドヤ顔の希に何も言うことができなくなり、希の言う通りに注ぎ分けてもらっていた。 まぁ、希の気配りは相当なもので、絶妙なタイミングで取り分けてくれるから、それに慣れてる俺は勿論のことマイク達からも文句は出なかった。 「はあっ…もう食べれない…美味かった…」 「ノゾミ、鍋って凄いんだね。“奉行”も必要だなんて…日本食恐るべし。」 いや、ユータ、それは違うぞ。

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