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第938話
とにかく〆のおじやまで平らげて、空っぽになった鍋とお腹を摩る俺達を見て、希は大満足らしかった。
動けない俺達を尻目にさっさとテーブルを片付けてしまった希は、程なくして焼酎のグラスとつまみを二つのお盆に分けて持ってきた。
その内の一つを俺とユータの前に置くと
「マイク、ちょっと相談があるんだけど、あっちの部屋行ってくれる?」
おおっ…何ともストレートな…
「いいよ。じゃあ行こうか。
トーマ、ユータのお守りを頼むね。」
「何だよ、それ!」
笑いながら二人が移動した。
よし!俺の番だな…待ってろ、マイク。
「ユータ、これは“焼酎”。知ってるよね?」
「うん!“お湯割り”美味しいよね。」
「おっ、イケる口だな。はい、これ。」
「ありがとう。」
「改めて…『乾杯!』」
かちりとグラスを合わせ、まったりとした味と匂いを舌の上で転がす。
「うん、美味しい!
…トーマ、俺達無理に押し掛けてきてごめんね。でも、どうしても二人に会いたくて。」
「そんなことない!来てくれて本当に嬉しいんだ。俺も希も。
…あの時は、本当にありがとう。もう、大丈夫。」
「そうか…でも辛い時はノゾミに側にいてもらって。ただ側にいてもらうだけでいいから。」
頷きながらも、俺はあの時の恐怖が一瞬だけ蘇ったが、ユータにそっと握られた手の温かさに、すぐ気をしっかり持つことができた。
「ありがとう。
ところでユータ、何か悩みとかでもあるの?」
ユータが吃驚して目を大きく見開き、握った手を少し引いた。
「え…何で?」
「何となく…カンと言うか…時々ふっと悲しそうな目をしてるから。
もし違ったらごめん。」
「ふうっ…トーマには敵わないな…」
ユータは俺の手をぎゅっと握り締めてきた。
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