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第941話
涙で濡れた目を見開き、驚いたユータが呟いた。
「…マイク?」
マイクはユータに駆け寄り、物も言わずに抱きしめた。
希がそっと俺の横に来て肩を抱いた。
「希、何で?」
希は携帯の画面を見せてきた。
『とーま♡ 通話中』…え?俺のと繋がってんの?
「え?何で?いつの間に?」
「さっき部屋に行く前にちょっとお前の携帯を拝借した。マイクがどうしても二人の話を聞きたいって言うから。」
「…何だよ…」
少しむくれて視線をあの二人に戻すと、泣きじゃくるユータに、マイクが何か話しかけている。
そして、何度も何度も頷くユータ。
この様子じゃ…いい方向に解決しそうだな。
俺達は暫くその場に佇み、二人を見つめていた。
やがて、泣き止んだユータとマイクが手を繋いで俺達のところにやって来た。
ユータは俺に近付き、そっとハグしてきた。
「トーマ、ありがとう。俺、挑戦してみるよ。
俺達、絶対に繋がってるから、もう、迷わない。」
俺はユータの背中を軽く叩き
「ハンカシユイさんにお願いしたんだろ?」
と尋ねると、ユータは驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔で頷いた。
そしてマイクが
「トーマ、ノゾミ、ありがとう。
俺はどんなことがあってもコイツを離したりしない。どんなことがあっても守り通す。
勤務先が遠くなるなら、二人の中間地点くらいに引っ越しすればいいんだ。何ならユータの近くに異動届け出したっていい。
それは俺達で話し合って上と相談すればいいだけのこと。
そうだろ?ユータ。」
笑顔で頷くユータが呟いた。
「ハンカシユイさん、お願い聞いてくれた…」
良かった。
神様仏様っていたんだ。
あの時はそう思えなかったけど。
きっとユータは一縷の望みをかけて日本に来たのかもしれない。
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