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第943話
「さ、明日も出掛けるからそろそろ休もうか。
(…マイク、程々にな!)」
何を言ったのか分からないが、希はマイクに何か耳打ちしていた。
マイクは笑いながら、こちらも耳打ちで希に答えていた。
俺も二人ともう一度お休みのハグをして別れた。
ユータの…はにかんだ幸せそうな笑顔が忘れられなかった。
布団に潜り込んで、いつものように希に抱きしめられる。
「なぁ、マイクに何言ったんだ?」
「んー?内緒!
さ、俺達も寝ようぜ。明日起きれなくなる。
…斗真、二人のことありがとうな。
お前のお陰でアイツらの不協和音が正常に戻ったよ。」
「役に立ったなら良かった…二人が別居せずに上手く解決できたらいいな。」
「うん、そうだな。
それにしてもユータの方が執着してるとは思わなかった。絶対逆だと思ってたけど。」
「いや、マイクだって大概だぞ。
いいじゃん。愛し合ってる二人なんだから。
ほら、もう寝るよ。お休み、希。」
「…ん…お休み、とーま…」
いくらキスしてきても今夜はもう相手にしない。
流石にウザくなって、くるりと背中を向けると
「とぉーまぁ…」
泣きそうな声が聞こえた。
あー、もう、面倒臭い奴め。
また向き直り、鼻先にお休みのキスをしてやった。
ぎゅっと抱きしめられる。足まで絡みつかれて。
背中をポンポンと叩いてやると、少しその力が緩んだ。
「お休み、希。愛してるよ。」
胸元に擦り寄ると、髪の毛にキスされて抱きしめる腕にまた力がこもった。
…もし、もし希か俺に転勤の話が出たら…別々に暮らすことになったら…
俺達はどうするんだろう。どうなるんだろう。
いや、今は考えたくない。
俺は馴染んだ肌の感触と匂いに包まれ、目を閉じた。
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