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第945話
テレビを見ながら俺達の仕事や家族の話をして、洗濯を干し終えたらいい時間になった。
待ち遠しくて堪らない風のマイクが、うずうずし始める。
希が笑いを堪えながら
「さ、そろそろ出ようか。」
と声を掛けると、マイクはダッシュで玄関に走って行った。
「彼は何を買いたいんだ?」
こっそりとユータに尋ねると
「ドラ◯ン◯ールの悟◯のフィギュアだよ。
俺達希の持ってた漫画にハマってさ。
アニメも放送されてたから、それからずっとファンなんだ。」
やっぱり。なーるほど。
「そんなにゲットしたい物だったら初日に行けば良かったのに。」
「ふふっ。俺の見たいものを優先してくれたらしいよ。」
「はあっ…愛されてるね、ユータ。
朝イチから思いっ切り惚気られた…ご馳走様。」
「いやぁ、君達だって。
希は相変わらず“トーマが一番!”ってオーラ巻き散らかしてるし。」
なんてコソコソ話していると、玄関から大声で呼ばれた。
「ユータ!トーマ!行くよぉ!」
「ほらほら。愛しのマイク様がお呼びだよ!」
二人で顔を見合わせ、笑いながら向かう。
外は風が少し冷たいけれど、日が差すところは暖かだった。
「桜、綺麗だね。」
「もう散り始めてる。花びらが雨みたい。」
「『桜吹雪』って言うんだよ。」
マイクは夢中で写メで撮りながらも、早く行きたい気持ちがありありと分かる。プレゼントを買いに行く子供みたいだ。
「気に入るものがあるといいね。」
「うん、きっと!」
電車に乗って移動すれば目的地はすぐだ。
目当ての店はすぐに見つかった。
店内にずらりと並んだフィギュアに興奮気味のマイクとユータ。
希を交えて、ああでもないこうでもない、あっちがいい、いやこれの方が、とオタクっぷりを繰り広げているのを俺は保護者的な目で微笑ましく見ていた。
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