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第948話

結局迷った挙句に、マイク達は俺達と同じ機種を選んで、二つ買うから、と少し“勉強”してもらった。 値切り交渉も初めての経験で、ユータは大喜びだった。 お礼を言って店を出ると 「トーマ、お腹空いた。お昼はどこ?」 と腹ぺこユータに催促されて、駅近くのラーメン屋に行くことにした。 昼時とあって少し並んだが、行列すら面白いのかマイクもユータも始終ご機嫌だった。 「あー、楽しかった!買い物楽しいねぇ。 欲しかった物も全部買えたし、ノゾミ、トーマ、本当にありがとう!」 「どう致しまして。俺達も買い物できたから楽しかったよ。ありがとう。」 「夜はステーキの店に連れてくから、これは一旦コインロッカーに預けて行こう。 もう少し時間あるけど、どっか行きたいところある?」 「そうだな…そうだ!歌舞伎、歌舞伎座に行きたい!バスで素通りしただけだもんね。」 「歌舞伎か…これぞ日本!だね。 空席があれば午後の公演に入れるはず。 …。」 「「やったーー!!」」 “やってみる”?“行ってみる”じゃないのか? そして希は何処かへ電話すると、暫くして振り返りドヤ顔で言った。 「チケット、ゲットしたぞ!」 マイクとユータの喜ぶこと! 何で?電話予約ってできたっけ? 腑に落ちない顔付きの俺に、希がそっとささやいた。 「公私混同させてもらったよ。 大島専務に電話しちゃった。」 「え?大島専務!?」 大口顧客の彼は、あちこちに顔が利くVIP。 何故か俺達のことを気に入ってくれて、プライベートでも親しくさせてもらっている。 「おい、希…見返りが怖いぞ…」 「分かってるよ。早速だが…来週末、お前と一緒の食事の誘いを受けた。」 「うへぇ…気の張る時間が…うわぁ…」

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