「西桟敷だって。マイク達はその番号のドア。俺達はこっち。」 マイクは戸惑いながらドアを開けてユータと入っていく。 そして俺達も。ここで分かれるのか？ でも外から見る限りでは同じ列なんだけど… ミニ玄関？靴を脱いで…おおっ、掘り炬燵！ 「足伸ばせる！見やすいっ！」 「マイク！ユータ！」 「良かった…お隣じゃん！ここすごーい！何か個室みたいだな。」 「お茶も飲んでいいんだよ。」 物珍しくてひそひそと遠慮しながらもはしゃいで、これだけで大喜びのマイク達を見ていると、大島専務に本当に感謝した。 こんないい場所をすぐに手配できるなんて、やっぱりあの人は只者ではない。 大御所との一緒の食事は、何度経験しても緊張して気が進まないのだが、今回は感謝の意味を込めてサービスするか。 「なぁ、希。ありがとう。」 「ん？どう致しまして。 って言うか、専務に感謝だな。」 「うん。やっぱ、あの人…凄い人だったんだな。 そんな人に可愛がってもらってるって…ちょっとウザいと思ってた自分が恥ずかしいし申し訳ないよ。」 「あははっ…来週覚悟しとこうぜ。 俺達もこんな所初めてだからな。高級なデートみたいでワクワクしてる。 …見ろよ、マイク達も楽しそうだぜ。」 肩を寄せ合い、笑顔で何か話しながら写メを撮る二人の姿が目に入ってきた。 「来て良かったな。」 そう言うと、希は頷きながらうれしそうに微笑んだ。 希が手配してくれたパンフレットを見たり、ネット検索で色々調べているうちに開演となった。 凄い。ボキャブラリーが酷いが、それしか出てこない、 迫力が違う。 俺も希も夢中になっていた。 芸を極める、守る、というのは、こんなに人の心を打つものなのか。 俺も…誰かの心に響く、そんな生き方をしていきたい…素直にそう思った。