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第954話
名残惜し気に離れていく指を追いかけそうになったが、周囲から湧き起こる拍手に紛れてしまった。
「はあっ…感動した!
これを見ないで帰ろうとしてたなんて、有り得ない!
ノゾミ、トーマ、我儘聞いてくれてありがとう。
本当に良かったよ!」
「ノゾミ、トーマ、ありがとう!すっごく楽しかったよ!
日本って本当に素晴らしい国だね。
もう、ここに住みたいくらいだ。」
興奮気味に話す二人の話を俺達も満足して聞いていた。
こんなに喜んでもらえるなんて思ってもみなかった。機転を聞かせてこんな良い席を手配してくれた希に感謝だ。
「こちらこそだよ。
ところでお腹は空いてないか?」
「いや、さっき“マクノウチベントウ”を食べたから…アルコールなら入るけどな。」
「ディナーは肉を…と思ってたんだが、その状態ならヘビーだね。
じゃあ、少しお洒落な場所でカクテルでもどうだい?」
「いいね!賑やかな“イザカヤ”もいいけど、『お洒落』にも惹かれるよ。」
俺達は感想を言い合いながら、二人で一度行って店の雰囲気も窓からの景色も最高に綺麗だったホテルのラウンジを目指して、小腹減らしに少し歩いた。
「いらっしゃいませ、ようこそ。
四名様でしょうか?」
端正な顔立ちのウェイターに迎えられ、黒縁眼鏡の年配のバーテンダーが「いらっしゃいませ」と微笑みながら頭を下げた。
頷くと、窓際の重厚なレザーの席に案内された。
窓から都内の煌びやかな灯りが飛び込んできた。
異次元の空間に誘われたような気になってくる。
「すげぇ…N.Y.も香港も敵わないぞ。」
「希、ここ…前と同じ席だ!」
「うん、そうだな。めっちゃ綺麗じゃん!」
ヒュゥッ
静かに口笛を鳴らしたマイクを「下品だ!」とユータが突いていた。
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