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第955話
俺達が座って落ち着いた頃、タイミング良くおしぼりとメニューを差し出された。
きちんと客の動きを見てるんだな。
前回斗真と来た時とは違うウェイターだったが、どちらも押し付けがましくない好ましい接客で、このバーの洗練された教育が伺えた。
ありがとう、と礼を言い、それぞれに好みのドリンクとそれこそ“お洒落”なつまみをいくつか注文した。
ウェイターが復唱して立ち去ると、マイクが姿勢を正して改まって切り出した。
「ノゾミ、トーマ、本当にありがとう!
本当に有意義で楽しい旅になったよ。
俺達、忙しくて旅行なんて久し振りで…二人のお陰で本当に満足した旅になった。
それにユータの思ってることも分かったし…
本当に感謝する。ありがとう。」
「本当にありがとう!
俺達、今までで一番楽しい旅になったんだ。
何から何まで気を配ってくれて本当にありがとう!
二人のお陰でマイクとちゃんと向き合うこともできた。
どれだけお礼を言っても言い足りない。」
「そんな!楽しんでもらえたならそれでいいんだ。
だって俺達だって一緒に楽しんだんだから。
な、斗真?」
「そうだよ!日本に住んでるからって、観光地を全て巡ってるわけないし、俺達の方こそ二人にお礼を言いたいよ。
マイク、ユータ、日本に来てくれて本当にありがとう!」
硬い握手が離れる頃「お待たせ致しました」と遠慮がちな声で運ばれてきたオードブルはとても美味そうで、俺達は有意義だった今回の旅の祝杯をあげた。
そして美しい夜景をアテに暫く楽しんでいたのだが、マイクが『ここでもう十分楽しませてもらったから、希達の家でゆっくり話したい』と言うので、タクシーで帰ることにした。
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