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第958話

「はあっ、全く……いくらユータでも、手を握られたら振り解いて!俺以外触らせないで!」 「えぇっ!?“親愛の挨拶”みたいなもんだよ!? ハグと同じだよ! 希、何言ってんの?」 「…だって…斗真は俺のものなのに…」 そう言ってまた俺を抱きしめてくる。 ウザい。 こうなったらとことんウザくなるんだ、希は。 適度なアルコールが入ってるせいか、いつもよりも絡みがしつこい。 でも、それも愛されてる証拠だと思うと、俺も… 「希。」 優しく名前を呼んでやる。 返事はない。頭を擦り付けながら首を振って嫌々するなんて、お前は子供か!? 「希、ここ片付けたらベッドに行くぞ。」 くっ、と息を飲む声がして、また腕に力が込められ、首筋にキスされた。 思わずびくりと反応すると 「…分かった…」 と大型犬が静かに離れて行った。 テーブルを片付けるその動きが、鼻歌混じりになっているのは気のせいか? “ベッドに行く”と言ったけど、エッチはしないぞ!?勘違いするなよ!? …いや…その気になっているのかも… ヤバい、マズい。 腕まくりをし嬉々としてキッチンで片付け始めた希を放置して、取り敢えず歯を磨きに洗面所に避難した。 俺、さっき何て言ったっけ…えーっと…確か… 『希、ここ片付けたら。』 …言い方がマズかったか…あんな言い方したら「夜のお誘い」してるようだよな… んー…客人がいるし、そんな気分ではないのだけど… ん?何か聞こえる…あー…だ… マイク、盛るの少し控えてくれないか?毎晩じゃん!帰国したら好きなだけできるだろ? ユータ…そんな切ない声出さないでくれよ… 二人が交わってる場面が脳裏に浮かんだ。 瞬間、俺の下半身に熱がこもってくるのが分かった。 ヤバっ、俺、ヒトのエッチに何反応してんだよっ!

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