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第959話
鎮まれ、鎮まれぇ…
あの時代劇のお馴染みのセリフがぐるぐると頭を回っている。
なだめすかして何とかお利口になった俺自身にホッと一息付いて、ドアを開けた。
希は…いない。
きっとワクワクして布団にくるまって俺を待っているのだろう…
はあっ…どうしようか…
自分が勘違いさせたから、と拒否したらそれはそれでまた面倒だ。
朝までグチグチ言って寝かせてもらえないかも。
そうかといって、希のしたいようにさせたら、明日が怖い。
ん………と逡巡しながら寝室のドアを開けると…
いた。
上半身裸だ…あれはきっと下も脱いでる…ベッドの下にこんもりと服と下着が…あー…真っ裸だ…
「とーま、やっと来た♡」
はあっ…ヤル気満々。
仕方ない、釘刺しておくか。
「希…ちゃんとエッチするのは、明日の夜二人っきりになってから。いいな?」
「うん♡分かってる!」
本当か?本当に分かってるのか?
俺の言う意味、ちゃんと分かってる?
仕方ない…腹括ってお相手するか…俺の言い方が悪かったんだ。
あの場合は
『希、“明日も早いから”ベッドに行くぞ!」
が正しかったんだ、きっと。
観念して、男らしくバッサバッサと来ているものを脱ぎ捨てると、希の待つ布団へ潜り込んだ。
「ひえっ、斗真冷たっ!!!」
俺の冷えた身体が、爪先からじんわりと希の体温で温められていく。
あったかい…気持ちイイ…
鳥肌の立った希に抱きしめられて、ほおっ…と息を吐いた。
「希、あったかい。」
ごりごりと額を胸に擦り付けると、少しむくれた駄犬が、ギュッと抱きしめてくれる。
希は…それ以上仕掛けてこなかった。
キスは滅茶苦茶されたけれど。
拍子抜けした俺は、希の頭を『いい子いい子』と撫でて、そのまま希に抱きついて、いつの間にか寝てしまっていた。
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