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第961話

コイツバカだ… 「おい、朝っぱらから何やってんだ!? まだマイクとユータがいるんだぞ? 俺、夕べ言ったよな、『二人っきりになったら』って。何で夜まで待ってくれないの? 何でそれ守れないの?ってか、何で守ってくれないの? 俺が約束破るとでも思ってる? そんなに信用ない?」 そう一気に捲し立てると、取り急ぎウェットティッシュで萎えた俺自身を拭き取り、下着に収めた。 俺の凄い剣幕に、希は『ごめん』とひと言だけ言うと、あとは黙っていた。 朝から欲を吐き出した気怠さと、一気に怒鳴ったせいで酸欠になったのか、頭がクラクラする。 数度深呼吸してからベッドから降りた。 希は俺の怒号にビビったのかピクリとも動かない。 俺は希を部屋に残し、そっと洗面所へ向かった。 客室からは物音一つしない。 何も考えず怒りに任せて怒鳴ったせいで、声が聞こえてたらどうしようかと思っていたけど… 良かった…二人はまだ休んでるんだろう。 朝昼兼用のホテルランチの予定だから朝寝を決め込むと言っていたし。 ムカついていた。 勝手なことをする希に心底ムカついていた。 何故待てない? 他人の気配がある所で、何故仕掛けてくる? このままリビングに…とも思ったが、物音を立てるのが嫌で、迷ったがまた寝室へ逆戻りした。 …希は…さっきの場所で座り込んでいる。 俺は、打ちひしがれているらしい希に声も掛けずに、布団に潜り込んで目を閉じた。 少し冷えた身体が、布団の温もりに馴染んで温められてきた。 けれど、頭は冴えて眠れない。 暫くして、希が遠慮がちに声を掛けてきた。 「…斗真…」 「…………何。」 「ごめん。構って欲しかったし、ちょっとした悪戯で…」 「………………」 「ねぇ、ごめんなさい。いい子にするから。」 最後は涙声になっていた。

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