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第964話

美味しいと評判のホテルバイキングで朝昼兼用の食事を済ませるべく、俺達も準備をする。 荷物を持ったまま空港に行かなければならないから、マイク達に忘れ物がないかもう一度チェックしてもらった。 これでしばらくお別れか…今度はいつ会えるんだろう…と思うと、ちょっとセンチな気分になる。 「もし何かあったら送るよ。」 「どうせ残ってたとしても、どうせ大したことのない物だよ。 よく歯ブラシとか忘れちゃうんだよねー。」 ユータが笑いながらそう言って洗面所に確認に行った。 「本当に楽しい旅になった。 日本がもっと大好きになったよ。 ありがとう、ノゾミ、トーマ。」 マイクがそっと俺をハグして、背中を軽く叩きながらささやいた。 「ノゾミと仲良くな。」 俺も叩き返して 「ユータを泣かせるなよ。」 そして顔を見合わせてまた笑った。 「忘れ物、無さそうだよ。」 ユータが俺のところにやって来た。 そしてマイクから俺を引き剥がしてハグすると 「お互い意地っ張りは止めて素直になろうね。 トーマ、ノゾミと幸せに…」 「仕事も上手く折り合いがつくように… ユータもちゃんとマイクに甘えるんだぞ。」 顔を見合わせて、またハグした。 「寂しくなるよ。」 「うん、お世話になりました。本当にありがとう。トーマ、大好きだよ。」 「ほらほら、まだ数時間は一緒にいられるんだから。お別れはもう少し後だよ。」 マイクに揶揄われても、俺とユータはハグしたまま暫く動けなかった。 優しくて強いユータ。 二人が離れ離れにならないように… 「斗真、ユータ、そろそろいいかな?」 「二人共もういいだろ?」 痺れを切らした伴侶達の声がした。 そっとハグを解いた俺達は肩を叩き合って笑った。

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