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第969話

滅入りそうな気分を吹き払うように、希が明るい声で言った。 「これで終わりじゃないから。また会おうよ! しっかり稼いでお金も貯めて。」 「そうだね。」 「ノゾミの言う通りだ。さぁ、バリバリ稼ぐぞぉ!」 「頼りにしてるよ、旦那様!」 「あははっ、お前もしっかりな。 ノゾミ、トーマ、元気でな! また会える日を楽しみにしてる。」 がっちり握手をすると、マイクはウインクしながら言った。 「ノゾミ、トーマ、見送りはここまででいいよ。 最後まで見送られたら、俺達は本当にボストン行きをキャンセルしそうだ。」 「何だよ、大袈裟だな…うん、でも分かった。 二人とも、元気で。」 立ち上がりそれぞれにハグをしながら、二言三言ささやいて、また握手をする。 別れ難い親友との挨拶を済ませると、希が笑いながら告げた。 「じゃあ、俺達が先に行くよ。 到着したらメッセでも送ってくれ。 …またな!」 「うん、またな!」 「元気で!」 「また会おう!」 名残惜しく何度も後ろを振り返り、手を振った。 人混みに紛れて段々見えなくなり、やがて視界から消えた。 「…斗真、大丈夫?」 「…うん。希こそ大丈夫か?」 「この数日間楽し過ぎたから…その分の反動があってさ… 斗真、我儘一杯聞いてくれてありがとう。 しんどくないか?」 「大丈夫。」 「ありがとう。」 少し涙声になった希に敢えてその事に触れず、俺達は空港を後にした。 「希、晩ご飯どうする?」 「結構外食続いたからなぁ…家で食べたい。 それでいい? 冷蔵庫に何があったっけ…」 「そうだな…使わなかった鍋の具材があるし…俺はまた鍋でもいいよ。すぐできるし。」 「じゃあ簡単にそうするか。」 「鳥モモだけ買おうよ。」 「よし、そうと決まれば急いで帰ろう! …早く斗真と二人っきりになりたいし。」

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