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第971話

まだ十分種類があるじゃないかっ! やったぁーーーっ!!! 心の中でガッツポーズをすると、すぐにプライスカードを確認していく。 おおっ…普段なら絶対に買わない。いや、買えないお値段… ふと隣の希を見遣ると、うんうんと頷いた。 値段は度外視してざっと見た後、季節限定のケーキを探す。 あった! 何々…『洋酒に漬け込んだベリーをたっぷりとスポンジの間に挟み込んだ濃厚なオトナのためのケーキです』 うわぁ…生唾が出る。 こっちは…『選りすぐりのベルギー産チョコを存分に使ったパテシィエ自信の一品です!』 『新鮮な朝採り苺をクリームにも練り込み爽やかな酸味と甘味のバランスが最高』 あー…堪らない… 「…希はどれ?」 「斗真はどれ?俺はひと口でいいし、残りは斗真のものだから好きなの選んで。」 一つはベリーに決定だ。あと一つ…うわぁ、迷う… 季節物にするか、定番の物にするか…うーん… 真剣に悩む俺を見兼ねたのか、店員がアドバイスしてくれる。 「どれも甘さを控えておりますが、この『オルガニスト』は特にチョコレートのほろ苦さが人気のお品ですよ。男性にも大人気です。」 「こっちの『春のヴァイオリン』は?」 「専属農家から今朝仕入れた苺をこれでもかっ、と言うくらいに使用しております。 苺好きな方にはぜひオススメです。」 「えーーっ…マジ悩む…」 「斗真、一つは決まってるんだろ?」 「何で分かる?」 「当たり前じゃん。で、もう一つで迷ってんの?」 「うん。」 「じゃあそれ二個とも買って、全部で三個買えばいいだろ?」 「えっ、いいの?」 「うん。 すみません、季節限定の三種類、一つずつお願いします。」 「かしこまりました。ありがとうございます。 ではお包みしますので暫くお待ち下さいませ。」

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