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第972話
心なしか笑いを堪えて接客されてるような気がする。
それでも、待ち時間にケースを眺めて(今度はこれとこれにしよう!)と次なるおねだりの妄想を繰り広げていた。
「お待たせ致しました!」
光沢のある紙袋を渡された。三個だけなのにずっしりと重い。うーん、この重量感わくわくする。
「ありがとう!」
「あの…もしよろしければこれを…うちのパテシィエからです。」
「え?」
手渡されたのは、淡いブルーの不織布 でラッピングされた袋だった。
「お客様が選んで下さってる様子を見てたらしく『あんなに嬉しそうに選んで下さるなんて、作った甲斐がある!是非これをプレゼントして差し上げて!』と申しまして。
よろしければどうぞ。
そしてまたのご来店をお待ちしております。」
「えっ、そんな…ありがとうございます!」
思い掛けないプレゼントまでゲットして店を後にした。
「くっくっくっ…斗真の笑顔は皆んなを幸せにするんだな。
良かったな、何もらったんだ?開けるのが楽しみだよね。」
「何だろう…“パテシィエから”って言うことは、焼き菓子かチョコレートか…」
「明日のお楽しみまでできて良かったな!
さぁ、肉買って急いで帰ろう!」
袋を揺らさないように気を付けて持ちながら、いつものスーパーで食材を買い込み(二人で来ると、結局余計な物を買ってしまうんだ)、家路に着いた。
荷物をテーブルに置き、いそいそとケーキを冷蔵庫に入れていると
「あ!マイクからだ…飛行機に乗ったって!
めっちゃ『Thank you!』と『We love you♡』と『We should get together! 』が並んでる…分かったってば!」
希が呆れたように画面を見せてきた。
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