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第978話

side:マイク 俺の顔はいつも通りだっただろうか。 視線が泳いだり、発汗したりしてなかっただろうか。 『突然何を言い出すんだ!?』とユータを責めるような言葉と態度を取ってしまったが、それは正しかったのだろうか。 ユータはそれ以上追求してくることもなく、逆に俺の気分を害してすまない、と謝罪してきた。 ユータは、ずっと聞きたかったことを聞けて、スッキリしたような感じになっていたが、俺がまだ怒っていると思っているのか、俺の顔色を伺うようなユータの視線が絡み付く。 俺は、敢えて何もなかったかのような雰囲気を滲ませて、目を閉じていた。 そっと横を見ると、ユータは窓の外を見つめていた。 大好きな親友達、大好きなニホンとの別れが辛いのだろう。時折、目尻を拭っているらしかった。 あの事件の後、ノゾミにも聞かれた。 否定する俺のことを彼は無条件で信じてくれた。 そして今…同じことを最愛の伴侶に聞かれた。 彼もまた…俺のことを心底信じてくれた。 ブチ撒けたいよ!全て!! …そうすればどんなに楽になるか。 こんなことをこの世を去るまで一生抱えたまま生きていかなければならないなんて。 あの計画を打診されたのは俺だけだった。 勿論、何度も断った。ユータに相談しようかとも考えた。 しかし、度重なる説得と、被害者達の姿を見るにつけ、それは正義という名の計画への加担に上書きされていった。 加えて『成功した暁には、君達の望む部署への異動と、成功報酬を』というオマケ付きの待遇に、元々ユータが望んでいた部署へ行かせることができるのなら、と心が動いてしまった。 ――結局、俺は親友を売ったんだ。

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