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第979話

どんな美辞麗句を並べ立てて、どんなに正当化しようとしても、あれが仕組まれた囮り捜査だったのは間違いない事実。 そのせいでノゾミだけではない、トーマも心にも身体にも傷を負うリスクだって分かっていたはずなのに。 奴らの手口を理解していながら、俺のことを信頼してくれている親友達を結果的に裏切ったんだ。 俺は…自分達のことしか考えてなかった。 ユータを愛している。 ユータが一番で、あいつの笑顔を守りたかった。 だから事件に次ぐ事件で、心のバランスを崩して壊れそうな最前線の場所からどうしても引き離したかった。 どんな手を使ってでも。 そこにつけ込まれたのかもしれない。 今となっては、それは言い訳に過ぎないのだが。 ノゾミに指摘された時に、認めてしまえば良かったのか。 …それはできなかった。 大切な心許せる親友を失う選択は、あの時の俺にはなかった。 俺が否定すると、ノゾミはホッとした顔を見せて、あっさりと引いてくれた。 頭のいいノゾミのことだ。本当は気付いていたのかもしれない。 それでも、俺の答えに乗ってくれて、完全に信用してくれた。 それがかえって辛かった。 『お前の言う通りだ』と告げたかった。でも、できなかった。 そして今――最愛のユータに、ノゾミと同じ答えを言ってしまった。 自分を疑ったことを許せないと、問題をすり替えて。 俺は、俺は一体どうすれば良かったんだ? ユータを守りたかったのに、守れていない、この現状をどうすればいい? 後悔と自責の念で押し潰されそうになる。 俺がやったことは決して許されることではない。 トーマは未だにあの事件のトラウマに悩まされているじゃないか。 情けない。 大切な人達を傷付けて。 俺は、俺は……

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