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第981話
side:希
ケーキで釣った斗真はご機嫌だった。
そりゃあ、そうだ。
中々自分では手を出さないケーキと、店から思わぬプレゼントを貰ったのだから。
そんなに甘い物が好きなのか。
…俺より?
『ケーキを食べたいから』とご飯も量も減らして、子供みたいにワクワクしてる斗真を見ていると俺も幸せな気分になる。
「コーヒー入れてやるよ。」
「やったぁ!」
カップを手に、ソファーで待つ斗真の隣に座った。
「希、どれ食べる?」
「そうだな…ひと口ずつくれよ。後はお前にやるから。」
「全部?いいの?」
俺は甘い物は普通程度に食べるくらいだ。
斗真みたいに激甘大好きではない。
甘い物を買うと、必ず繰り返されるこのやり取り。
情報を共有したいから、味見はさせてもらう。
でもそれだけで満足だ。
「いいけど、糖尿病とかには気を付けてくれよ。
俺が食べさせたせいでお前が病気になるのは嫌だ。」
「くくっ…大丈夫だよ。加減してるから。」
おいおい、ケーキ3個で加減してると言えるのか?
お前の健康管理の方が心配だよ…
そんなことを考えてる間に、斗真は俺が残したケーキを全部平らげた。
うへぇ…胸焼けがする…よく食えるなぁ…
「…ご馳走様…ん、希?何?」
「いや、別に…」
「よく食うな、とか思ってんだろ?」
「いや、そんな風には」
「顔に書いてる。」
「へえっ!?」
「なんちゃって。」
斗真は『ご馳走様』ともう一度言って手を合わせると、皿やカップを流しに持っていき洗い始めた。
「俺が洗うよ!」
慌てて斗真の側に行くと
「もう終わったから。あ、歯磨きしてくる。」
俺の横をすり抜けて行ってしまった。
え?怒らせた?
何か気に触るようなこと言ったか?
後を追って斗真の元へ。
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