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第992話
斗真は冷蔵庫を開けてボトルを選んでいたが
「やっぱり…アルコールはいらないや。
希は?飲みたい?」
「んー?俺は水でいいよ。そんなに“飲みたい”って訳じゃないから。」
「OK!」
すぐに水の入ったグラスを持ってきてくれた。
俺の隣にすとんと座ると、斗真は一気に水を飲み干した。
「……」
「ん?斗真、何?」
「…ううん、何でもないよ。
希、もう俺、眠くて限界だ…ごめん、先に寝るね。お休み。」
俺をそっと抱きしめるとキスを一つ残して、空になった自分のグラスを洗いにキッチンへ行ってしまった。
俺は暫くその後ろ姿を見つめていたが、斗真を一人にしたくなくて、慌てて追い掛けた。
ベッドにはこんもりと丸まった斗真。
布団を少し捲り、滑り込んで抱きしめる。
「…希…」
「一緒に寝よう。お休み、斗真。」
「…うん。」
猫のように胸に擦り寄ってくる斗真を抱え直して、抱き枕のように足を絡める。
冷えた布団はすぐに俺達の体温で温まってくる。
丁度口元にくる頭頂部に何度もキスをしていると
「…希。」
しまった、やり過ぎたか。
眠いと言ってたのに邪魔をしたのか。
「しつこくてごめん。」
慌てて謝ると、斗真はふるふると首を横に振った。
「…なぁ、希…」
「さっきからどうしたんだ?何が気になるんだ?
お前らしくない。ちゃんと話せよ。」
「…もし、もし、だよ?どっちかが転勤になったら…
俺は希と離れて暮らすなんて考えられない。
俺に辞令が出たら退職する。
希に出たら…やっぱり退職して一緒について行く。」
「急にどうしたんだよ…あっ、もしかして…ユータの転勤話を引き摺ってるのか?」
胸に擦り付いたまま頷く斗真。
あぁ、萌える。かわい過ぎるよ、斗真。
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