995 / 1000
第995話
斗真の態度にテンションが上がってすぐに布団に潜り込み、背後からそっと抱きしめた。
首筋に擦り付いて、すんすんと匂いを嗅ぐと、斗真の匂いがした。
「…ばか。匂いを嗅ぐな。」
「いいじゃん。いい匂いなんだもん。」
「…好きにしろ…」
「やったぁ♡」
OKが出たならこっちのもんだ。
思う存分斗真の匂いを堪能しているうちに、瞼が重くなってきた。
動きの鈍くなった俺に気付いた斗真は、ゆっくりと身体を反転させると、俺の胸に擦り付いて大きく息を吐き布団から頭を出した。
その身体を抱え直しいつもの姿勢に落ち着くと、斗真が何か呟いた。
「…ん?何?斗真、何て言ったの?」
それに答えはなくて、斗真の規則正しい寝息だけが聞こえてきた。
「…斗真、愛してるよ。」
額にキスを一つ落とすと、俺も夢の中に落ちていった…
ピピピピピ…目覚ましのアラームだ…
浮上していく意識。
自分以外の息遣いと温もりに包まれていることに気が付く。
「希、おはよう。」
いつの間にか逆転している体勢に苦笑ながらも、キスと共に朝の挨拶を返す。
「斗真、おはよう。身体、大丈夫?」
「うん、大丈夫。
さぁ、今日からまた気合い入れて仕事するぞ!」
「おっ、頼もしいねぇ。流石俺の部下。
期待してるよ、遠藤斗真君!」
「勿論ですよ、遠藤チーフ。」
くすくすくすっ
鼻先をくっ付けて朝から甘いムードに浸っていると…
「ヤバい!弁当作らなきゃ!」
突然べりっと身体を引き剥がされて、ベッドにひとり取り残された。
「とぉーーまぁーーーっ!」
甘い時間を取り上げられた俺の絶叫が、寝室に虚しく響いた。
ともだちにシェアしよう!