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第997話

その瞬間、アラームが鳴った。 もぞもぞと腕の中の希が目を覚ましたようだ。 「希、おはよう。」 希は俺が抱いていることに苦笑しながらも、キスと共に朝の挨拶を返してくれた。 「斗真、おはよう。身体、大丈夫?」 「うん、大丈夫。 さぁ、今日からまた気合い入れて仕事するぞ!」 「おっ、頼もしいねぇ。流石俺の部下。 期待してるよ、遠藤斗真君!」 「勿論ですよ、遠藤希チーフ。」 くすくすくすっ 鼻先をくっ付けて朝のイチャイチャを楽しみかけて、ふと時計を見た。 「ヤバい!弁当作らなきゃ!」 纏わり付く希の身体をべりっと引き剥がし、ダッシュで部屋を飛び出した。 「とぉーーまぁーーーっ!」 背後から希の絶叫じみた声が聞こえたが、無視だ。 あんなの構ってたら遅刻するじゃん。 俺は…俺だって朝のイチャイチャを楽しみたいけど…キスだけで済まないだろ? ちょっと妄想して火照る頬を手の平で仰ぎながら、手を洗って冷蔵庫を開けた。 「はい、ご馳走様でした。」 目の前には膨れっ面の猛獣が一頭。 それでも完食している。 「…希、いつまで膨れてんの? 俺は朝からそんなの嫌だぞ。」 「…分かってるよ。分かってるけど。」 「あー、もぉーーっ… 希の思うようにヤってたら、完全に遅刻するだろ? キスだけで済まないじゃん! 俺達今回休み明けで頭もボケてるから、さっさと仕事モードに戻らなきゃならないんだぞ! さっきも言ってたじゃん! チーフ自体がそんなんでどうするんだよ!」 「…ここではチーフじゃないもん。」 出た。 出たよ、『もん』が!甘えた発動。 こうなったら面倒だ。仕方ない、奥の手出すか。 「…希…」 「………………」 「帰ったら…ゆっくり…エッチしような。」

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