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第16話
「…部屋の鍵はどこだ?」
圧のかかった低い声に抗えず
「…鞄の…内側のポケットの中です…」
一旦俺を降ろしはしたものの、なぜか腰を抱いたまま鞄を探り鍵を取り出すと、希は俺を引きずって部屋へと入った。
靴を脱がせられリビングのソファーへと連れて行かれる。
「…暑いな…」
エアコンのスイッチが入れられた。
起動する静かな音が部屋に響く中、希はキッチンへ行くと冷蔵庫からミネラルウォーターを二本取り出して、一本を俺に手渡した。
「…すみません…」
プシュッ と開封したそれを一口飲むと、少し落ち着いてきた。
ふうっと一息付いてテーブルにボトルを置いた。
希は俺の斜め前に腰掛けると、ジャケットを脱ぎネクタイを緩めた。
怒号罵声でも何でも受けるから、詰るならさっさと詰って、帰ってくれ。
いや、その前に俺はあの時のことをきちんと謝罪しなければならないんだ。
観念した。
覚悟を決めて大きく息を吐くと
「希…
あの時はごめん。
ずっと、ずっと謝ろうと思ってた。
謝りたくてもお前はいなくなってしまって。
何年経っても、いつまでも…向日葵を見るとありありとあの時のことを思い出して…
謝って済むことじゃないと思っている。
顔を見るのも嫌なら、退職してもいい。
本当に…ごめん…」
「…謝る?今更?
お前の名前を見つけた時は驚いたよ。
俺に…あんなことをした奴と仕事しなくちゃいけないなんて。」
やっぱり…許してくれないよな。あんなことしといて。
膝の上の握りしめた拳が震える。
身体が痺れたようになり体温が落ちていく。
なんならここで殺してくれてもいい。
希の気が済むなら。
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