18 / 1000
第18話
ちゅっ
希の唇が音を立てて離れていった。
「マジで具合悪そうだし、今日のところはキスだけにしといてやる。
退屈しのぎのオモチャが見つかってよかったよ。
あ、会社では普通に上司と部下として接してやるから、ありがたく思えよ。
今日から三日間有休申請しといてやる。
体調整えてから出社するといい。
じゃあな。」
俺の返事も聞かず、希がドアを閉めて出て行った。
頭が割れるように痛い。
『退屈しのぎのオモチャ』
その台詞がずっとリピートして離れない。
好きな時に俺を『抱く』ということか?
何を言われても何をされても
…逆らえない。
無邪気に笑っていた希はどこにいったんだろう。俺が好きだった希は…
あぁ、そうだ。認めたくなかったけれど俺は希に恋していたんだ。アイツのことが好きだったんだ。
だから欲情して無理矢理抱いたんだ。
俺のせいで女を抱けなくなったと言っていたけど、じゃあ、男しか無理だってことなのか?
あの後…留学先で何があったんだろう?
ぐるぐる回る思考を整理できず、ショート寸前の回路をそのままに、とにかくシャワーを浴びようとフラフラしながら立ち上がった。
水しぶきの中、とめどなく流れる涙を止める術もなく、思う存分泣いて。
元はと言えば、自分が仕出かしたことなんだから、泣いてもどうしようもないと自分に言い聞かせて、ベッドに倒れ込んだ。
ともだちにシェアしよう!