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第25話

そして金曜日、みんな早めに仕事を切り上げてそれぞれに馴染みの店に向かう。 個室のある小ざっぱりした居酒屋風のこの店は、客層もよく料理も美味くて、歓送迎会ではここを使うのが定番になっている。 何よりもイタリア人のボスがお気に入りで、料理だけでなく、女将を狙っているという噂まで飛び出すほどだ。 俺は時間のずれ込んだ商談を済ませ、重い足取りのまま店に向かうと、主賓を残すのみでほぼ全員が揃っていた。 板野に頼んで空けてもらっていた隅の席に目立たぬように座ると、ボスと希が入ってきた。 間に合ったことにホッとして座りなおすと、板野が早速音頭を取った。 「皆さんご注目! 本社から我が日本支社へ転勤になられた遠藤 希マネージャーの歓迎会を始めさせて頂きます! 遠藤マネージャーから一言頂きます。どうぞ!」 「改めまして遠藤 希です。 皆さんのご活躍は、本社でも高い評価を受けています。 その足を引っ張らないように精一杯努めますので、どうぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。」 拍手喝采の中、希が照れ臭そうに笑っている。 「では、乾杯の音頭は我らがボス、ジョルジョにお願い致します!」 「希、私達は君を迎えることができてとてもうれしい。 思う存分その能力を発揮してくれることを望んでいるよ。 さあ、みんな準備はいいかな? 希の活躍と我々の前途を祝して…乾杯!」 カンパーイ!! 後は例のごとく無礼講だ。 俺は絡んでくる同僚を適当に交わしながら、静かにウーロン茶を飲んでいた。 そろそろ動かないとマズい思い、ビール瓶を持ってまずボスの元へ向かった。 ご機嫌なボスに酒を勧め、希の前に移動する。 希がじっと俺を見ている。

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