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第45話

そこからどの道を通ってどうやって帰ってきたのか定かでないほど、俺は心底疲れて果てていた。 全力疾走した身体だけでなく、とにかく心が疲弊していた。 鞄を放り投げ、着ていたものを脱ぎ散らかしてバスルームへと向かった。 お湯が溜まるのを待ち兼ねて、浴びる熱いシャワーが心地いい。 お気に入りのバスオイルを入れると、ラベンダーの香りとともにお湯が白く濁る。 浴室に広がる香りに包まれて、その中にとっぷりと身体を浸して、ただぼんやりと自分を解放する。 これから先のこと、自分の身の振り方、希への気持ち…今は何も考えたくない。 とにかく、ゆっくりと身体も心も休めよう。 きっと来週には、笑いながら希に祝福の言葉をかけることができるはず。 頬に何かが伝う。 水滴? いや、違う… 俺、泣いてるんだ… 急に湧き上がってきた黒い感情に一気に支配されて、溢れ出る嗚咽を堪えることができず、俺は声を出して泣いた。 散々泣いて泣いて、涙も枯れ果てたと自覚した頃、少し痛む頭を抑えて浴槽を出た。 着替えを済ませ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し飲んだ水が身体に染み渡っていく。 ふと、携帯の画面が光るのに気付いた。 …誰から? 希? 画面には『遠藤 希』の文字が。

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