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第48話

結局、金曜まで仕事以外、希からの接触はなかった。 このまま何事もなく帰れる…矢田との待ち合わせは18時半だったな。 「影山、ちょっと来てくれ。」 帰り間際、希に呼び止められた。 何を言われても今日は無理だ。嫌な汗が流れる。 「…何でしょうか。」 「頼みたいことがあったんだが…時間はあるか?」 「申し訳ありません。生憎先約がありまして。」 「…そうか。仕方ないな。」 「申し訳ありません。失礼します。」 希があっさりと引き下がったことに驚きながらも、逃げるようにその場を立ち去った。 この一週間、できるだけ顔を合わさないように、なるべく接触しないようにしてきたのに。やはり面と向かって顔を見たら、切なくて胸が痛くて、泣きそうになる。 まだ正式に発表してないから内密に、と上層部からお達しがあったらしく、社内でも直接結婚の話を希に尋ねる者はいなかった。 だから俺も皮肉を込めた 『結婚されるんですね。おめでとうございます。』 その一言が言えずにいた。はっきり言えたら少しは楽になったのだろうか? 俺達の関係もスッキリと終わりを迎えることができたのだろうか? モヤモヤする気持ちを抱えたまま、矢田が指定した店へと急いだ。

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