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第49話
うわっ、ここ…俺…場違いじゃないのか?
住所…合ってるよな…
矢田、お前、何考えてこんなとこ指定してきたんだ?
着いた先は見るからに高級料亭。
急いで矢田の携帯を鳴らした。
「おっ、影山っ!今どこだ?俺はもう着いてるぞ。」
「おい、矢田っ!お前何考えてんだ?ここ…間違ってないよな?」
「あー、着いたんだ。そのまま入ってきて。
予約、俺の名前で取ってるから。案内してもらってよ。待ってるから。」
それだけ言うと矢田は電話を切ってしまった。
ため息をついて仕方なく格子戸を開けた。
「いらっしゃいませ。ご予約はどちら様でしょうか?」
「あ…矢田で予約してあるんですが。」
「矢田様…失礼致しました。はい、ご予約頂戴しております。お待ちしておりました。
こちらへどうぞ。お連れ様はもうお待ちになっておりますよ。」
落ち着きなくそわそわしながら案内された先には、すっかりリラックスした感の矢田がいた。
「遅い!待ちくたびれたぞ。ドタキャンされたかと思った。」
「お前…何で?」
「あぁ、後で話すよ。とりあえずのビールでいいか?」
慣れた風に注文すると、俺に向かい側の席に座るよう勧めてきた。
言われるがままに席に着き、ジャケットを脱いでネクタイを緩めると、中居さんが即座にハンガーに掛けてくれる。
恐縮して、ありがとう と声を掛けると、矢田は
「後は自分達で好きなようにしますから、もういいですよ。何かあれば声掛けますから。」
とやんわり追い出してしまった。
「さ、まずは一杯。今週も頑張りました。お疲れさん!」
「お、おう。お疲れさん。」
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